記憶の政治――ヨーロッパの歴史認識紛争
によって 橋本 伸也
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記憶の政治――ヨーロッパの歴史認識紛争 epubダウンロード無料 - 内容紹介 歴史認識問題に揺れる東アジアに対し、ヨーロッパでは歴史・記憶の共有と和解が進んでいるように捉えられている。しかし中東欧やロシアにまで視野を広げると、そこには歴史の記憶をめぐる激しい亀裂や対立がある。EUとロシアの境界に位置し、複雑な記憶の磁場にあるバルト諸国の状況を通して、ヨーロッパにおける歴史認識の抗争を見る。 内容(「BOOK」データベースより) 歴史認識問題に揺れる東アジアとは違い、ヨーロッパでは歴史・記憶の共有と和解が進んでいるように考えられている。しかし、ヨーロッパを中東欧やロシアまでを含む全体として捉えると、そこには「記憶の戦争」と呼ばれるほどの激しさを伴う歴史観の亀裂と分断が見られる。EUとロシアの境界に位置し、複雑な記憶が幾重にも交錯するバルト諸国の状況を通して、ヨーロッパにおける歴史認識の抗争を見る。 商品の説明をすべて表示する
記憶の政治――ヨーロッパの歴史認識紛争の詳細
本のタイトル : 記憶の政治――ヨーロッパの歴史認識紛争
作者 : 橋本 伸也
ISBN-10 : 4000611240
発売日 : 2016/4/27
カテゴリ : 本
ファイル名 : 記憶の政治-ヨーロッパの歴史認識紛争.pdf
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著者はロシアやバルト地域を専門とする歴史家である。本書は、バルト三国を例として、ヨーロッパにおける歴史認識紛争の起源、経過と見通しを論じたものである。歴史認識問題が東アジアだけでなくヨーロッパ諸国でも深刻であることを本書で理解した。ヨーロッパにおける歴史認識問題というと、第二次大戦後のドイツを中心としたヨーロッパの歴史和解が、EU設立とセットで、「お手本」として語られることが多い。本書はそのような浅薄な理解に対して、バルト三国などにおいては深刻な歴史認識紛争が続いていることを説いたものである。バルト三国(エストニア・ラトヴィア・リトアニア)は、三国合せても人口が700万人程度の小国であるが、その歴史は苛酷であり、周辺の大国、特にロシア帝国に長く支配され、第二次大戦中にはドイツの侵略を受け、その後ソ連軍による「解放」と衛星国化を経て、ソ連崩壊後にようやく再独立を果たした。三国は言葉や民族構成が異なるが、ソ連支配下時代に移住してきたロシア系の人々がかなりの割合を占めていることは共通であり、このことが国内における深刻な歴史認識問題を引き起こしている。著者は、ヨーロッパにおける歴史像を次の四つに整理している(第3章)。(1)「西欧型」第二次大戦はドイツのファシズムに対する英米等の勝利であるとする歴史像。仏蘭におけるレジスタンス記憶がこれを補完する。(2)「西中欧型」ナチ・ドイツによるホロコーストの犯罪被害に加えて、大戦後はソ連や東ドイツの独裁体制に苦しめられた被害者としての歴史像。(3)「東中欧型」ナチ・ドイツとソ連による支配を経験したバルト・東中欧諸国による共産主義・ナチズムという全体主義による犯罪を厳しく糾弾する歴史像。(4)「東欧型」ソ連時代の公式歴史像を継承したもので、反ファシズム戦争としての第二次大戦におけるソ連の英雄的戦いを称える歴史像。バルト三国においては、バルト人たちの(3)の歴史像と、ロシア系住民たちの(4)の歴史像が激しく衝突している。2007年にはエストニアの首都タリンで、(4)を表徴した「ブロンズの兵士」(エストニア内で亡くなった赤軍兵士の追悼・顕彰像)の撤去を巡って、大規模な流血事件「ブロンズの夜」すら勃発した。その後、様々な融和策が講じられていはいるが、歴史認識を巡る対立は根深い。戦争や侵略とそれにともなう虐殺などの悲劇は世界中で今も続いている。そのような悲劇から一定期間が過ぎて被害者・被侵略者側が歴史を振り返り、自らのアイデンティティを確認しようとすれば歴史認識を巡る紛争は避けられない。しかし紛争に対する解決のための安易な「処方箋」は存在しない。本書は、歴史認識問題に対しては、まず歴史家をはじめとする当事国の人々が、過去の歴史や記憶と冷静に向き合うことから始めることが第一歩であることを示している。
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