マネへの招待

マネへの招待の詳細

優れた美術書とは、絵画の選定が良いこと、解説が分かりやすく正確であること、発色が自然であることなどの条件を適えてくれるものだと思っています。この「マネへの招待」は招待シリーズの11作目で、オールカラーで美術書としては廉価で内容が充実しているシリーズだと感じています。マネは重要で著名ですが、なかなか日本で見る機会が少ない画家の一人です。マネの傑作であり、本書の表紙を飾っている「フォリー＝ベルジェールのバー」を含めたイギリス・ロンドンのコートールド美術館のコレクション展が開催されています。東京都美術館を皮切りに、愛知県美術館、そして神戸市立博物館へ巡回するわけで、神戸で鑑賞する前の予習として本書をじっくりと眺めました。「フォリー＝ベルジェールのバー(18p)」は、「身分の高い女性ではなく娼婦を描いた」と書かれていました。51歳でマネは亡くなりますが、50歳の時に本作品を完成させているわけで、質の高い大作を描いているマネですから、もう少し病魔に勝って描くことができれば、その後のパリ画壇もまたもっと素晴らしい歩みを見ることか出来たと想像しています。なお、このフォリー＝ベルジェールは、現在もパリにあるようです。(76p)とても素敵な場所ですね。36pの「草上の昼食」はマネの代表作であるだけでなく、「パリ中を騒然とさせたスキャンダル」と書かれていました。当時としては「裸を描くルールを打ち破った」極めて斬新な問題作です。黒が画面の多くを占めている中での裸体のヴィクトリア・ムーランの姿は見る者を釘付けにしています。人物画ですが、自然の中とは思えない静謐な空気感まで表しているようです。62pの「すみれの花束をつけたベルト・モリゾ」も黒色の衣装からのぞくその瞳から女性画家としての意志の強さが伺えます。「エミール・ゾラ(60p)」では、黒を基調としたバックに描かれた歌川国明の力士絵が印象的です。「オランピア(55p)」も当時は酷評を受けましたが、とても有名な作品です。「メキシコ皇帝マクシミリアンの処刑(24p)」も実にセンセーショナルな題材です。名画は美術館で実際に対面して観賞するのが、一番理解が早い訳ですが、物理的な制約もあり、なかなか実現が困難ですので、本書のような素敵なムックがあれば分かりやすいですね。