事故・災害事例とその対策

事故・災害事例とその対策の詳細

コンビナート事故から、日航機墜落、東海村JCO臨界事故、森永ヒ素ミルク事件など、幅広い事故事例を収録している点では資料価値があるが、残念ながら読み手が事故から学びたくても学べない本になっている。分担原稿を寄せ集めて本にしただけ、という感がある。最大の欠陥は、どのような事故なのかが読み取れないことだ。例えば、図解もなく「2B弁」、「6号重合器」などと文章で出てきても、設備構造が理解できない。それを踏まえたうえで、人が何をしたのか、どこにミスがあったのか、何が起こったのか、どのように事故に進展したのか、時系列で事象を整理する必要がある。このベースの部分を理解させずに、原因や教訓を並べたてても、何のことかさっぱり分からない。1つ1つの事例に割くページ数を制限して、書籍全体のボリュームを調整したのかも知れないが、世の中に広く、事故事例から学んで貰いたい、という目的の本としては、著しく説明力が不足している。事故の当事者の会社や、その現場検証に立ち会った専門家しか分からないような本なら、内部の報告書としてまとめておけばよい。「読めない本」を出しても、「再発防止の処方箋」にはならない。意図は理解できるだけに、残念である。